「丁寧」ということ

2025/03/26

アロマヒーリングの施術を行うとき、私は常に「お客様の身体を丁寧に愛していく」という意識を持つように心がけています。施術は単なる作業ではなく、一人ひとりの身体に向き合い、その方のエネルギーや状態を感じ取りながら行うものです。それは、まるで繊細な花を育てるように、優しさと根気をもって接していくことだと感じています。

しかし、現代社会を見渡すと、「丁寧さ」が失われつつあるように思えてなりません。忙しさに追われるあまり、人と人との関係も、仕事の仕方も、どこか機械的で、効率優先になってしまっています。サロンや整体院、治療院は数多くありますが、本当に丁寧に、心を込めて施術を行っているところは少なくなっている気がします。施術がただのルーティンワークになり、人間がまるで物のように扱われてしまうケースも見受けられます。

「丁寧さ」とは、時間をかけること、相手に関心を持ち続けること、そして忍耐をもってじっくりと向き合うことだと思います。「育む」という言葉が示すように、丁寧さには根気が必要です。これは子育てにも通じることでしょう。子どもがすぐに成長するわけではなく、日々の関わりの中で、少しずつ愛情を注ぎながら成長を見守る必要があります。また、農作物を育てるときも同じです。作物が芽を出し、花を咲かせ、実をつけるまでには、たくさんの手間と時間、そして愛情が必要です。

それなのに、現代は何もかもが急ぎすぎているように感じます。合理的に考えすぎるあまり、すべてが効率化され、目先の欲求をかなえることばかりに意識が向いてしまっています。その結果、かつて人々が大切にしていた「丁寧さ」がどんどん失われてしまいました。これは、生活のあらゆる場面において見られる現象です。

こうした時代背景の中で、スローライフやスローセックスが注目されるようになってきたのは、現代の「急ぎすぎ現象」に対する反発なのかもしれません。効率一辺倒の社会に疲れを感じた人々が、もっとゆっくりと、丁寧に暮らしたい、丁寧に愛し合いたいと感じ始めているのではないでしょうか。

スローセックスという概念を提唱したアダム徳永氏の考えには、共感できる部分がたくさんありますし、アダム氏のことはリスペクトしています。彼が提唱する「時間をかけて、丁寧に愛し合う」という考え方には深い意義があると思いますし、多くの人々にその重要性を伝えた功績は大きいと感じています。ただし、私個人の考えとしては、セックスというものはマニュアル化したり、教科書のように指導したりするものではないのではないか、と思っています。ハートで相手のことを感じ取ることこそが重要な本質でありますが、マニュアル化したとたん、ハートではなく頭になってしまい、感じる力も閉じてしまいます。基礎的な知識として最低限のことは知っている必要はありますが、一番重要なのは感じる感性です。それを愛と呼んでもいいでしょう。

愛し合う男女が本当にお互いを理解し、丁寧に身体を愛し合えば、それだけで自然と身体は調和を取り戻し、エネルギーが循環します。興味深いことに、リンパを流すラインと性感帯が重なる部分が多いのですが、これは偶然ではないように思います。もしも愛し合う男女が時間をかけて丁寧に触れ合い、お互いの身体をいたわり合えば、それだけでリンパの流れが改善され、心身ともに健康になるのではないでしょうか。そうなれば、わざわざリンパマッサージを受けなくても良くなるかもしれません。それほど、丁寧さには強い力があるのです。

丁寧に触れられること、丁寧に接されることは、身体にとっても心にとっても非常に大きな癒しになります。私たちの身体は、もともと優しいタッチや、丁寧な接触を求めています。強い圧力や刺激を受けると、身体は防御反応を起こして固まってしまいますが、逆にソフトなタッチで丁寧に触れられると、身体は安心し、リラックスし始めます。

私自身も、自然農を実践してきた中で「丁寧さの力」を何度も実感してきました。自然農では、化学肥料や農薬を使わず、自然の力を活かして作物を育てます。手作業で土を耕し、種をまき、作物を育てていく過程は、まさに丁寧さそのものです。しかし、最近は手を痛めてしまったため、これまでの方法を見直さざるを得なくなりました。とりあえず来年1年間はお米を作るのを一旦休み、その間にいろいろな実験や準備をしていこうと思っています。

農作業も、施術も、子育ても、どれも根底にあるのは「丁寧さ」です。そして、それは急がず、焦らず、時間をかけて向き合うことで初めて生まれるものです。これからも私は、丁寧さを大切にしながら、お客様一人ひとりに寄り添った施術を提供していきたいと思っています。

丁寧に触れられることの心地よさ、丁寧に接されることの温かさ。それを、もっと多くの人に感じてもらえたらと思います。

-初めての方へ, 日記