
豊かさとは
多くの人が「豊かな人生を送りたい」と願っています。けれども、豊かさのイメージは人によって本当にさまざまです。ある人にとっては、お金をたくさん持つことが豊かさの象徴かもしれません。別の人は、有名になって人々から注目されることを豊かさと感じるでしょう。夢を実現することこそが人生のゴールだと思う人もいれば、物質的に満ち足りた生活を豊かさだと考える人もいます。逆に、物質よりも精神的な充実を求めて、修行や探求の道を歩み続ける人もいるでしょう。さらに、人との関わりを大切にし、良い人間関係を築くことが一番の豊かさだと信じる人もいます。
私自身も、これまでに「豊かさとは何か」を探し続けてきました。お金、地位、名誉、社会的な成功、夢の実現、精神的な修養――多くの人が「これこそ豊かさだ」と思うものを、私も一通り、徹底して追い求めてみました。けれども、それらを得たからといって心の底から豊かだと感じることはありませんでした。むしろ「まだ足りない」「もっと欲しい」という思いが膨らんでいったのです。
そんな試行錯誤の中で、あらゆるものを失った時、意外なことに本当の平安が訪れました。その瞬間に初めて気づいたのです――豊かさとは外にあるのではなく、自分の内側にもともと備わっているのだと。何もなくても、あるがままの自分を受け入れ、自由に生きられることが、かけがえのない豊かさなのだと。
たとえば、自然の中で風や光を感じるとき、心から分かち合える人と一緒に過ごすとき、豊かさが胸に広がります。美味しいものを「美味しいね」と言いながら味わう瞬間にも、確かな豊かさがあります。働きたいときに働き、休みたいときに休む。何にも縛られずにいられること。何かをしていても、何もしていなくても「今ここにいる自分」が豊かだと感じられること。それこそが本当に尊いのです。
「中庸が大切」とはよく言われますが、最初から中庸がわかる人はいません。右へ行き、左へ行き、時には極端に走りながらも突き抜けてみることで、自分にとって心地よい場所が少しずつ見えてきます。行きつ戻りつしながら、自分らしい居心地のいい豊かさの居場所を発見するのです。
目的や目標を必死に追わなくても、成り行きにまかせて流れていく人生もまた美しいものです。サロンで施術を受けたお客様が「こんな気持ちよさは初めて」「今まで体験したことのない感覚だ」とおっしゃるのを聞くと、人は心と体が解きほぐされた瞬間に、自然と豊かさを感じるのだと実感します。満たされた笑顔で帰られる姿に、私もまた豊かさを分かち合っていただいているのです。
中には「サロンに行きたいけれどお金がかかるからどうしよう」と悩まれる方もいらっしゃいます。そういう方は、きっと計画的にお金を大切にしている真面目な方なのでしょう。でも、ときには無計画に、気持ちが向いたことに思い切ってお金や時間を使ってみるのもいいものです。その瞬間にしか出会えない、新しい豊かさが待っているかもしれません。
豊かさは「どこかにある」ものではなく、気づいたときにすでにここにあるもの。外の世界を旅しながら、最後には自分の内にある豊かさに戻ってくる。その旅こそが、人生を豊かにしてくれるのではないでしょうか。