
スキンシップについて
2025/03/26
なぜ、私はオイルトリートメントにこれほどまでにこだわっているのでしょうか。世の中には、服を着たままで受けられるマッサージの方が圧倒的に需要があると言われていますし、商売的にはそちらの方が利益を上げやすいかもしれません。それでも、私はオイルトリートメントの道をひたすら貫いてきました。それには、深い理由があります。
私自身、幼少期に親からスキンシップをしてもらった記憶がほとんどありません。抱きしめられたり、優しく撫でられたりといった温かい身体のふれあいを経験しないまま成長したためか、強烈に「人肌が恋しい」と感じる自分がいました。それをどうにか乗り越えようとして、私は青春時代、ストイックで禁欲的な生活を自分に課すことにしました。強い意志で感情を抑え込み、欲求に蓋をして生きることで、その寂しさを克服しようとしたのです。
そんな私に転機が訪れたのは、ある出張のときでした。仙台での会議に出席した際、非常にハードなスケジュールに追われ、疲労困憊の状態でした。心身ともに疲れ果て、ホテルに戻る気力もなくなった私は、会議が終わった後、ふとマッサージ店を探してみました。夜も遅い時間だったため、営業している店は少なく、たまたま見つけたのがオイルマッサージのお店でした。
そこで担当してくれたセラピストは、まさに「ゴッドハンド」の持ち主でした。その施術は、私がそれまで味わったことのないほどの至福感をもたらしてくれ、身体だけでなく心まで癒されるのを感じました。それまで蓋をしていた感情が、ふわりと解きほぐされるような感覚に包まれ、疲労が一瞬にして吹き飛んだのです。
この経験をきっかけに、私はオイルトリートメントの魅力にどんどん惹かれていきました。しかし、そのセラピストを超えるような施術者には、今でも出会ったことがありません。それほど衝撃的な出会いでした。この強烈な体験が、私の心に火をつけ、アロマテラピーやオイルトリートメントを本格的に学びたいという思いが強まっていったのです。
ところが、男性がオイルトリートメントを学べるスクールは非常に少なく、なかなか見つけることができませんでした。ようやく偶然見つけたのが、男性セラピストを養成するスクールでした。そこに半年間通い、理論と実技の両方をしっかりと習得しました。
その後、私は田舎にUターンし、両親の介護をすることになりました。このとき、オイルトリートメントの技術が大いに役立つことになります。母に毎日オイルトリートメントを施す中で、意外な事実を知りました。それは、母もまた、親からスキンシップをしてもらった経験がほとんどなかったということです。私と同じように、母も「触れられること」に対する渇望を抱えていたのかもしれません。
母と私は、それまで決して良好な関係とは言えませんでした。言い争いや衝突も多く、距離感のある親子関係だったのです。しかし、オイルトリートメントを通してスキンシップを重ねるうちに、母の頑なだった心が少しずつほぐれていくのを感じました。施術中、母は心からリラックスしているように見えました。そして、ある日、こんな言葉を口にしたのです。
「こんな気持ちのいい思いをして、もういつ死んでもいいと思ってたけど、もっと気持ちのいい思いをしたいから、長生きしたい。」
その言葉を聞いたとき、私は胸が熱くなりました。オイルトリートメントが、母の心にこれほどまでの変化をもたらしたのだと実感した瞬間でした。そして、母の最期の言葉が、今でも私の心に深く刻まれています。
「生まれてきて良かった。」
母のその一言には、言葉にできないほどの重みがありました。オイルトリートメントを通じたスキンシップが、母に人生の最後の瞬間まで心地よさと幸福感をもたらしてくれたのだと感じ、私は涙がこぼれそうになりました。
この経験を通して、私は改めてオイルトリートメントの素晴らしさを実感しました。オイルトリートメントは、単なるリラクゼーションの技法ではありません。それは、スキンシップを通して愛を育み、人を癒し、幸せにする力を持っています。触れられることの温かさ、触れることで伝わる思いやり。その力を、多くの人に知ってもらいたいと心から願っています。
今、世の中にはさまざまな癒しの方法がありますが、私はオイルトリートメントが持つスキンシップの力を信じています。オイルを使って丁寧に身体に触れ、心と身体を癒していくこの技法には、言葉では表現しきれない深い力が宿っていると感じています。この素晴らしさを、もっと多くの人に広めていきたい。それが、私のこれからの使命だと思っています。