リンパドレナージュ

当サロンの施術では、 リンパの流れをよくするために オイルトリートメントとリンパドレナージュを組み合わせた手技を行っています。それではリンパドレナージュとは何か、リンパドレナージュの歴史、そしてオイルトリートメントとリンパドレナージュの違いについて述べていきます。

目次

リンパドレナージュとは?

リンパドレナージュ(Lymph Drainage)は、フランスで開発された手技療法で、リンパ液の流れを促進し、老廃物の排出や免疫機能の向上を目的とする施術です。主に「皮膚のすぐ下にあるリンパ管」にアプローチするため、軽い圧で行うのが特徴です。

手技には、ゆっくりとしたリズムで優しく皮膚をなでるような動きが多く、体のむくみを解消したり、リラックス効果を高めたりします。また、リンパの流れを意識して、特定のリンパ節(首、脇の下、鼠径部など)に向かって流すように施術するのが基本です。


オイルトリートメントとの違い

リンパドレナージュとオイルトリートメントは似ている部分もありますが、目的や手技に違いがあります。

比較項目リンパドレナージュオイルトリートメント
目的リンパの流れを促進し、老廃物の排出を助ける筋肉の疲労回復、血行促進、リラックス
手技の特徴軽い圧、ゆっくりとしたリズムでリンパの流れを意識深い圧やリズミカルな動きで筋肉や血流にアプローチ
使用オイルなし、またはごく少量(オイルを使わない手技も多い)基本的にオイルをたっぷり使用
適応むくみ、免疫向上、デトックス目的筋肉のこり、ストレス解消、リラクゼーション

どちらを選ぶべきか?

  • むくみが気になる、デトックスしたい、免疫を上げたいリンパドレナージュ
  • 筋肉のこりをほぐしたい、ストレスを解消したいオイルトリートメント

リンパドレナージュの歴史

リンパドレナージュ(Manual Lymphatic Drainage, MLD)は、20世紀初頭にフランスのエミール・ヴォッダー(Emil Vodder)博士とその妻エストル・ヴォッダー(Estrid Vodder)によって開発されました。ヴォッダー夫妻は、リンパ系の流れを改善することで、健康維持や病気予防に効果があることを発見し、独自の手技を確立しました。


リンパドレナージュの起源と発展

1. 1930年代:エミール・ヴォッダーによる開発

エミール・ヴォッダーはデンマーク出身の生理学者であり、フランスのカンヌで医療研究をしていました。彼は、慢性の風邪や副鼻腔炎の患者に共通して「首のリンパ節が腫れている」ことに注目しました。そして、優しく皮膚をさすることでリンパの流れを促し、症状が改善することを発見しました。
この手技を「マニュアル・リンパ・ドレナージュ(MLD)」と名付け、1936年にフランスのパリで初めて発表しました。

2. 1940~1950年代:医療現場での応用

ヴォッダー夫妻の技法は、当初はリラクゼーション目的で使われていましたが、次第に医療分野にも広まりました。特に、がん治療後のリンパ浮腫(リンパ系の障害によるむくみ)の改善に有効であることが分かり、医療機関での使用が進みました。

3. 1960~1980年代:さらなる発展と研究

この時期には、ドイツやフランスを中心にリンパドレナージュの研究が進みました。特に、ドイツの医師であるヨハン・アスドールファー(Johann Asdonk)やミヒャエル・フォルクマン(Michael Földi)らが、リンパ浮腫の治療法としてリンパドレナージュを科学的に検証し、確立しました。
また、この技法が美容業界にも広がり、エステティック分野でのリンパマッサージとしても普及し始めました。

4. 現代:医療・美容・ウェルネスの分野で活用

現在、リンパドレナージュは以下のような分野で広く活用されています。

  • 医療分野:がん治療後のリンパ浮腫、外科手術後のむくみ改善
  • 美容分野:フェイシャルケア、デトックス、セルライト対策
  • リラクゼーション分野:ストレス解消、免疫力向上、疲労回復

特に、オイルトリートメントと組み合わせることで、より深いリラックス効果を得られる施術として、多くのサロンで提供されています。

リンパドレナージュを行う際の注意点

リンパドレナージュは安全性の高い施術ですが、体に直接働きかけるため、適切な配慮が必要です。特にリンパ浮腫のある方や特定の疾患を持つ方への施術には慎重な対応が求められます。


1. 一般的な注意点

強い圧をかけない

  • リンパ管は皮膚のすぐ下にあるため、強い圧をかけると逆に流れが滞ることがあります。
  • 「優しく皮膚をなでるような圧」で行うのが基本。

施術前にクライアントの体調を確認する

  • 発熱、感染症、炎症がある場合は施術を避ける。
  • 体調がすぐれない場合は無理に施術しない。

水分補給を促す

  • リンパの流れが促進されることで老廃物が排出されやすくなるため、施術後は水分をしっかり取るようアドバイスする。

リンパ節のある部位を意識する

  • 主要なリンパ節(頸部、腋窩、鼠径部など)に向かって流すことを意識する。

2. リンパ浮腫の方への対応

リンパ浮腫(リンパ系の機能低下により体の一部がむくむ状態)の方には、通常のリンパドレナージュとは異なる配慮が必要です。

リンパ浮腫の専門知識が必要

  • 一般のエステやリラクゼーションサロンでの施術は推奨されません。
  • 医療機関での治療(複合的理学療法=CDT)と連携するのが理想。

施術時のポイント

  • 医師の許可を得たうえで行う
  • 患部に強い圧をかけない(むしろ軽い圧で流す)
  • 心臓の方向へ優しく流すように手技を行う
  • リンパ浮腫のある腕や脚には、圧迫療法(弾性包帯や弾性ストッキング)と併用するのが望ましい

禁忌となるケース(施術を避けるべき場合)

  • 感染症(蜂窩織炎など)の兆候がある場合
  • 急性炎症(赤み、熱感、痛みを伴う)
  • 重度の心不全や腎不全の方(体内の水分バランスに影響を与えるため)

3. 妊娠中・持病がある方への注意点

妊娠中の方

  • 妊娠初期(特に12週まで)は避ける
  • 腹部への施術は避け、むくみが気になる脚や腕を優しくケア

高血圧・心疾患・腎疾患の方

  • リンパドレナージュによって水分バランスが変化するため、主治医と相談のうえ施術する

がん治療後の方

  • リンパ節を切除した場合、医師の許可を得たうえで慎重に施術
  • 強い圧をかけず、リンパ節の残っている部位へ優しく流す

4. オイルトリートメントとの違いを考慮する

サロンでリンパドレナージュと組み合わせる場合は以下の点に注意しています。

  • 圧を軽くし、リンパの流れを意識する。
  • 施術の最初にリンパ節を開き、流れをスムーズにする。
  • 筋肉の疲れを取るために、やや深めの圧を使うことも可能。
  • ただし、リンパ浮腫の方には深い圧を避ける。

まとめ

リンパドレナージュを行う際は、強い圧をかけずに優しく流すことが基本ですが、特にリンパ浮腫の方には専門的な配慮が必要です。